身体を動かすことの基本は『歩行』。自然界で生きる動物であれば、歩けなくなることは命の終わりを意味します。歩いて移動しなければ食料や水が得られない。雨風や日照りを避けることもできず、外敵から逃げることもできません。
人も動物。介護というサービスがなかったら、動けなくなった時点で命が終わります。
歩くとは『生きる』こと。歩かないと生きられないから、歩くという行動には身体の状態を維持する機能が備わっています。
その1つが筋ポンプ作用。脹脛は第2の心臓と呼ばれるくらい血流を促すための重要な部位です。しかし、最近の靴はデザイン性やクッション性ばかりが重視され、足の機能を活かそうとしない靴がたくさんあります。足ではなく靴で衝撃吸収するような歩き方や走り方が身についてしまい、本来の身体性能を発揮させることができなくなっています。
骨には衝撃を感知するシステムがあり、感知することで骨形成、免疫力の向上、精子の増産、短期記憶を司る海馬の活性化などの役割の一部を担いますが、衝撃を感知しなくなると、活動を止めたと認識して老化が加速するという研究結果が出ています。つまり、動くことを止めると身体は終わりに向かい始めるということです。また、地面からの抗力も減少するため前進する力も失われ、結果として楽に歩けなくなります。
TPOやキレイでありたいという願望はあると思いますが、足の機能が衰退するデメリットもしっかり考え、靴は履きわけてください。
正しく歩けば、少ないエネルギーで遠くまで歩くことができ、血流も促される。全ての運動に必要な体軸感覚や肩甲骨と骨盤のコントロール力も身につく。だから歩行は全ての運動と健康維持の基本と言っても過言ではありません。
毎日何千回と繰り返す重要な生存行動であるが故に、歩行には心身の健康を維持する機能が備わっています。歩き方は第一印象にも大きな影響を与え、高価でおしゃれな服を着ても『歩き方』が悪ければ貧相に見え、猫背で歩けば年齢より老けて見られます。
毎日繰り返す行動は想像以上に身体を変えていきます。例えば、高齢者が『たった1週間』車椅子で生活をすると、あっという間に歩けなくなるほど筋力が低下します。
どんなに便利な時代になっても動物であるかぎり、命を全うするには全身をしっかり動かし、活動し続けることが大切です。仕事を辞めず、社会や人との交流を断たず、人間形成を止めず、趣味を楽しみ続けてください。
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